【登山クリエイター】市民が愛する、武甲山の頂きへ【4:武甲山編】

登山クリエイター

 

早朝、

西武秩父線の横瀬駅に降り立った私は、
武甲山の登山口へと続く道を歩き始めた。

朝霧の中に浮かび上がる山の姿は、
どこか威厳に満ちている。

この山に登ることを決めたのは、
市民に愛される身近な山であると同時に、

その人工的な姿もまた知られているからだった。

 

 


人工の谷を抜け、市民の道へ

数時間後、
私は武甲山の山頂に立っていた。

そこに広がるのは、

言葉を失うほどの絶景……

だけではなかった。

山頂の展望台からは、
関東平野や秩父の街並みが一望できる。
だが、その足元に広がる光景は、
山が自らの姿を削り取られたかのような、
痛々しい姿だった。

 

採石場として利用された山肌は、
まるで大きな傷跡のように無機質にえぐられ、
人工の崖となってそびえていた。

登山口へ向かう道中、
セメント工場の巨大なプラントが目に入り、
山と人間の営みが
深く結びついていることを予感していた。

市民が愛する親しみやすい登山道とは裏腹に、
山が背負うこの「仕事」
の壮絶さを目の当たりにし、
私は複雑な思いに駆られた。

遥か昔から続く大地の物語に、
現代の人間が刻んだ強烈な一頁。

 

それは、
美しさだけでなく、
厳しさも併せ持つ武甲山の真実の姿だった。


失われた宝物、武甲の囁き

武甲山は、
石灰岩の宝庫として知られている。
私は山頂直下から、
登山道に沿って下り始めた。

そこは、天然の博物館だった。
かつては豊かな自然に覆われていたであろう山肌に、
今も残る植物たちが、
風に揺られながら囁きかけてくるようだった。

この山でしか見られない
固有種「ブコウマメザクラ」を
探してみたが見つからなかった。

そして、

道端にひっそりと佇む小さな祠や、
道標に刻まれた文字は、
この山が古くから地元の人々に信仰され、
親しまれてきた歴史を物語っていた。

 

武甲山は、
その雄大な山容だけでなく、

その懐に抱かれた繊細な自然と、
人間の営みとの複雑な関係で、
私を魅了してやまなかった。

 

私はこの山で、
冒険と、
物語と、
そして宝物を見つけた。

 

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