【登山クリエイター】百名山の隠者、道なき道を越え静寂の秘峰へ【3:皇海山編】

登山クリエイター

皇海山(すかいさん)、
その響きはどこか孤高の存在感を放っている。

百名山でありながら、
その深く険しい場所に佇む姿は、
選ばれし者しか辿り着けない秘境のようだ。

陽が稜線に沈み、
深い闇が森を包み込む頃、
私はようやく皇海山の登山口にたどり着いた。

疲労感よりも、愛車と歩んだ道への達成感が勝っていた。

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漆黒の林道、古き友との冒険

皇海山を語る上で、
この林道のことを抜きには語れない。

それは、登山そのものよりも
強烈な記憶として私の心に残っている。

深夜、標高を上げていく10km以上にも及ぶ
未舗装の林道。
漆黒の闇の中、ヘッドライトだけが頼りだった。

愛車の古いディフェンダーは、
私の緊張を察するように、
ゴツゴツとした岩や砂利の上を、
鈍い音を立てながら進んでいく。

ガタガタと揺れる車体に身を任せながら、
一歩間違えれば谷底へと落ちてしまいそうな恐怖と、
未知の世界へと向かう冒険心が入り混じっていた。

登山というよりは、
この道なき道を走破することこそが、
この旅のハイライトになってしまったようだった。

 

孤独な頂、静寂の物語

夜が明け、
山頂へと続く道は、
苔むした森の中へと続いていた。

周囲には誰もいない。
聞こえるのは、自分の足音と、
時折聞こえる鳥の声だけ。

他の百名山とは一線を画す、
圧倒的な静寂に包まれていた。

山頂に立てば、
そこには遮るもののない360度のパノラマが
広がっていた。

遠くには男体山や日光白根山、
そして足元には深い緑の森がどこまでも続いている。

それは、雄大な絶景というよりも、

この山が持つ静かで深い歴史を物語っているかのようだった。

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霧が誘う、森の宝物

皇海山は、
その山容だけでなく、
森そのものが宝物だった。

頂上から庚申山へと続く稜線を歩くと、
木々は苔に覆われ、
まるで深い森の主が住む世界に迷い込んだかのようだった。

朝霧が立ち込め、
あたりを幻想的な雰囲気に包み込む。

地面には無数のキノコが顔を出し、
雨上がりの木の葉は雫をきらめかせていた。

私は、大地の息吹を感じながら、
この静かな森の囁きに耳を澄ませていた。

この山に咲く花ももちろん美しいが、
この深い森の持つ神秘こそが、
皇海山が私にくれた最高の宝物だったのかもしれない。

この山で、私は自分だけの物語を見つけた。

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