【芝地管理規約】5:土壌環境における真菌類抑制措置

芝地管理規約

 

 

第1条(目的)

 

本規約は、芝生に発生するキノコへの適切な対策を講じ、芝生の健全な生育環境を維持し、美観を損なわないことを目的とする。

 

第2条(定義)

 

「キノコ」とは、芝生上や土壌中に発生する真菌類の子実体を指す。多くの場合、芝生そのものに直接的な被害を与えることは少ないが、美観を損ね、土壌環境の悪化を示す指標となることがある。

「サッチ」とは、芝生の刈りカスや枯れた根・茎などが分解されずに蓄積した層を指す。キノコの発生源となる腐植物質を多く含んでいる。

 

第3条(キノコの発生原因)

 

芝生にキノコが発生する主な原因は以下の通りである。

  1. 過剰な有機物(サッチ)の蓄積: 芝生の刈りカスや落ち葉などが適切に除去されず、サッチ層が厚くなると、キノコの栄養源となりやすい。
  2. 排水不良と過湿: 水はけの悪い場所や、過剰な水やりによって土壌が常に湿った状態が続くと、キノコが発生しやすい環境となる。
  3. 日照不足: 日陰になりやすい場所は土壌が乾きにくく、キノコの生育に適した環境となりやすい。
  4. 未熟な有機肥料: 完全に分解されていない堆肥などの有機肥料を使用すると、それがキノコの栄養源となる場合がある。
  5. 土壌中の埋没木材や切り株: 地中に埋まった木片や古い切り株などは、キノコにとって格好の栄養源となり、その周辺でキノコが発生することがある。

 

第4条(予防措置)

 

キノコの発生を未然に防ぐため、以下の予防措置を遵守すること。

  1. 適切なサッチ管理:
    • 定期的な芝刈り後、刈りカスは速やかに除去すること。
    • 年に1~2回(春・秋)はサッチング(芝生表面の枯れた茎や根の層を除去する作業)を実施し、サッチの過剰な蓄積を防ぐこと。
  2. 土壌環境の改善:
    • 定期的なエアレーション(土壌に穴をあける作業)を実施し、土壌の通気性と排水性を確保すること。
    • 目土を適切に散布し、土壌の団粒構造を維持し、水はけを良好に保つこと。
    • 特に水はけの悪い場所には、粗い砂を混ぜるなどの土壌改良を行うことを検討する。
  3. 適切な水やり:
    • 芝生への水やりは、土壌表面が乾いたことを確認してから、一度にたっぷりと与えること。
    • 頻繁な少量ずつの水やりは、土壌表面の乾燥を妨げ、キノコの発生を促進する可能性があるため避けること。
    • 特に夕方の水やりは、夜間に土壌が湿った状態が続きやすいため、可能な限り避けること。
  4. 日照の確保:
    • 芝生が日陰になりやすい場所では、周辺の樹木の剪定を行うなどして、日照を確保するよう努めること。
    • 一時的な日陰であっても、長時間続く場合はキノコの発生リスクが高まるため、対策を講じること。
  5. 有機肥料の選定:
    • 完全に発酵・分解された完熟堆肥や、芝生専用の化成肥料を使用することを推奨する。
    • 未熟な有機肥料の使用は、キノコの発生を誘発する可能性があるため、注意すること。

 

第5条(発生後の対処)

 

キノコが発生してしまった場合は、以下の手順で対処すること。

  1. キノコの除去:
    • 発見次第、キノコは速やかに根元から抜き取るか、刈り取って除去すること。手で抜き取る際は、胞子を飛散させないよう注意し、ビニール袋などに入れて密閉して廃棄する。
    • 放置すると胞子が飛散し、さらにキノコが広がる原因となるため、早期の対応が重要である。
  2. 土壌環境の再確認と改善:
    • キノコが発生した場所の土壌環境(水はけ、日当たり、サッチの有無)を再度確認し、予防措置(第4条)に基づいた改善策を実施すること。
    • 特に土壌中の木片や古い切り株が原因であると疑われる場合は、可能であればそれらを除去する。
  3. 薬剤の使用(最終手段):
    • 上記対策を講じてもキノコの発生が止まらない場合や、広範囲にわたる場合は、芝生用の殺菌剤(農薬)の使用を検討する。
    • 薬剤を使用する際は、製品の取扱説明書を熟読し、用法・用量を厳守すること。また、周囲の環境やペット、人体への影響に十分配慮すること。

 

第6条(注意事項)

 

  • キノコの多くは無害であるが、中には毒性を持つ種類も存在する。安易に口にすることは絶対に避けること。特に小さなお子様やペットがいる家庭では、より一層の注意が必要である。
  • 本規約は、キノコの発生抑制と美観維持を目的とするものであり、キノコの完全な除去や、土壌中の菌類すべてを排除することを保証するものではない。
  • 土壌中の菌類は、有機物の分解など、土壌生態系において重要な役割を担っている。過度な薬剤の使用は、土壌の健全性を損なう可能性があるため、あくまで最終手段として検討すること。
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