第1条(目的)
本規約は、芝生土壌の通気性、排水性、透水性を改善し、根の活性化および健全な芝生の生育環境を維持するために、適切な時期と方法でエアレーション(土壌穿孔)作業を実施することを目的とする。
第2条(定義)
「エアレーション」とは、芝生の土壌に物理的に穴を開け、土壌を一時的に緩める作業を指す。これにより、土壌に酸素を供給し、過度に締め固まった(踏み固められた)土壌構造を改善する。
「土壌の締め固まり」とは、芝生が踏圧や水やり、雨などにより土壌の粒子同士が密着し、空隙(すきま)が減少した状態を指す。この状態では、水や酸素の浸透が妨げられ、芝生の根が健全に生育できなくなる。
「コアリング」とは、専用の道具(ローンパンチなど)を用いて、土壌を円筒状に抜き取るタイプのエアレーションを指す。
「スパイク処理」とは、中空でない棒状の道具(スパイクなど)を用いて、土壌に穴を開けるだけのエアレーションを指す。
第3条(エアレーションの重要性)
エアレーションは、以下の重要な効果をもたらし、芝生管理の根幹をなす作業である。
- 通気性の改善(酸素供給): 締め固まった土壌に穴を開けることで、地中深くまで酸素を供給し、根の呼吸を促す。これにより、根腐れを防ぎ、新根の発生を促進する。
- 排水性・透水性の向上: 土壌中の水の流れを改善し、水はけを良くする。これにより、過湿による病害(キノコや葉枯病など)の発生リスクを軽減する。
- 根域の拡大: 穴が開いた部分に根が伸びるための通り道ができ、根が深く広く張ることを促す。結果として、乾燥に強い芝生となる。
- 目土の浸透促進: 開けた穴を目土で埋め戻すことにより、良質な目土を根の活動層に直接送り込み、土壌改良効果を飛躍的に高める。
- 地温の上昇抑制: 特にコアリングで土壌の一部を抜き取ると、熱がこもりにくくなり、夏場の地温の上昇を緩和する効果も期待できる。
第4条(実施時期)
エアレーションは、芝生が最も活発に生育する時期、または生育を促進したい時期に実施することを原則とする。
- 春期(4月~6月頃): 暖地型芝生(高麗芝など)が休眠から覚め、生育を開始する直前または初期に行う。土壌を緩めることで、新しい根の伸長を強力にサポートし、旺盛な生育を促す。
- 秋期(9月~10月上旬頃): 夏場の厳しい環境で疲弊し、締め固まった土壌を回復させるために行う。オーバーシードを行う場合は、種子の発芽床を確保するため、播種前に必ず実施すること(芝地管理規約1を参照)。

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2025.09.17
注意:
- 夏の高温期(7月~8月):土壌を掘り起こすことで根を傷つけ、芝生に過度なストレスを与える可能性があるため避ける。
- 冬の休眠期(12月~2月):根の回復力や成長力が低いため、開けた穴から乾燥や凍害のリスクが生じるため避ける。
第5条(実施手順)
エアレーションは、以下の手順を遵守し、特にコアリングを行う場合は、その後の目土作業を同時に行うことを義務とする。
1. 準備
- 水やり: 作業前日までに芝生に水を与え、土壌が適度に湿った状態(柔らかすぎず、固すぎない状態)にしておくこと。乾燥しすぎていると、コアリング時にコア(土の塊)が抜けにくくなる。
- 芝刈り: 事前に芝生を短く刈り込み、作業性を高める。
- 道具の選定: 土壌の締め固まりが深刻な場合は、土を抜き取るコアリングツール(中空ピン)を使用すること。軽い締め固まりや頻繁な作業の場合は、スパイク処理も許容される。
2. 穿孔作業(穴あけ)
- 均一な間隔: 芝生全体に均等な間隔(10~20cm程度)で穴を開けること。特に、人がよく歩く場所や、水はけの悪い場所は入念に行う。
- 深さ: コアリングの場合、最低でも5cm以上の深さまで穴が開くように作業すること。
3. コアの処理(コアリングの場合)
- 乾燥: コアリングによって抜き取られた土の塊(コア)は、そのまま芝生上に放置せず、数時間~半日ほど乾燥させること。
- 粉砕と除去: 乾燥後、コアを熊手やトンボの背などで細かく砕き、芝生の表面に薄く広げて目土として利用するか、あるいは完全に集めて除去すること。
4. 目土の散布とすり込み
- 必須作業: エアレーション後には、開いた穴に良質な目土(芝地管理規約3を参照)を充填することを必須とする。
- 目的: 目土を開けた穴に詰めることで、穴がすぐに塞がるのを防ぎ、良質な土壌構造を根域まで持続的に供給する。
- 方法: 目土を均一に散布した後、熊手やトンボ、ほうきなどを用いて、開いた穴の中に目土を確実にすり込むこと。
5. 水やり
- 目土作業完了後、たっぷりと水を与え、目土を土壌と穴に馴染ませて定着させる。
第6条(注意事項)
- 土壌の状態の把握:
排水性が極端に悪い場所でコアリングを行った場合、抜き取った土の層が硬い粘土質である場合がある。この場合は、目土に川砂などを混合して排水性を高めるなどの特別な土壌改良を検討すること。 - 根の切断:
コアリング作業では、多少の根が切断されるが、これは新しい根の発生を促すための剪定効果であり、適切に行えば問題ない。しかし、無理に作業を進め、芝生を剥がすなどの大きな損傷を与えないよう注意すること。 - 頻度:
一般家庭の芝生においては、最低でも年に1回(春または秋)のコアリング、または年に2回のスパイク処理と目土を行うことを推奨する。人通りが多い場所や水はけが悪い場所では、頻度を増やすことが望ましい。


