目次
第1条(秋の施肥の目的と基本方針)
1. 目的
本規約は、夏越しを終えた芝生の疲労回復と、冬の休眠期に向けた栄養貯蔵を促進し、またオーバーシードを行う場合は冬芝の健やかな発芽・生育を確保することを目的とする。
2. 基本方針
秋の施肥は、春から夏にかけて使用した窒素(N)成分の多い肥料から切り替え、リン酸(P) とカリウム(K) の割合が高い肥料を主体とすること。
第2条(秋の施肥手順)
以下の手順に基づき、適切な施肥を実施すること。
1. 施肥時期の選定
- 夏芝(日本芝・高麗芝など)の場合:
芝生の生育が緩やかになり始める時期(9月上旬〜10月上旬)を目安に、休眠に入る約1ヶ月前までに実施する。遅すぎる施肥は、凍害を受けやすい軟弱な新芽を出す可能性があるため避けること。 - オーバーシード(冬芝の種まき)を行う場合:
- 施肥は種まきと同時、または直前に行うことを原則とする。
- 冬芝の発根と初期生育を促進するため、特にリン酸成分を多く含む肥料(スターター肥料など)を選定すること。
2. 肥料の選定
- 一般の秋肥:
窒素成分を抑え、リン酸とカリウムが充実した芝生専用の秋肥を使用する。リン酸は根張りを、カリウムは耐寒性を高める効果がある。 - オーバーシード時のスターター肥料:
冬芝の種まき時に使用する肥料は、発根促進のため、リン酸の肥効が速やかに現れるものを選択すること。
3. 施肥方法と散布量
- 肥料は均一に散布し、ムラによる生育差や局所的な肥料焼けを防ぐこと。
- 製品に記載された用法・用量を厳守すること。特にオーバーシード直後の高濃度な施肥は、種子の発芽を阻害する可能性があるため、注意すること。
- 施肥後は、速やかに十分な量の水やり(散水)を行い、肥料成分を土壌に浸透させること。これにより、肥料焼けのリスクを軽減する。
第3条(オーバーシード後の特別管理措置)
オーバーシード(冬芝を播種した)を行った芝地については、以下の特別措置を講じること。
1. 水管理
- 種まき直後から発芽完了までの約2週間は、土壌表面が乾燥しないよう、頻繁に少量ずつ水やりを行うこと。種子が乾燥すると発芽率が著しく低下する。
- 発芽が確認された後は、徐々に水やりの頻度を減らし、一度に与える量を増やす通常の水やり(第4条準拠)へ移行する。
2. 刈り込み
- 冬芝の種まき直後の刈り込みは、種子や幼い新芽を傷つけるため、避けること。
- 冬芝が十分に生育し、草丈が規定の高さに達した後(通常播種後3〜4週間以降)、規定の高さで慎重に刈り込みを開始する。
3. 追肥
- スターター肥料による初期の栄養が不足した場合、冬芝の生育状況に応じて、液体の追肥を行うことを検討する。
- 追肥の際は、葉焼けを防ぐため、製品の希釈倍率を厳守すること。
第4条(注意事項)
- 秋の施肥は、夏芝を冬の休眠期に備えさせるための重要な作業である。窒素肥料を過剰に使用すると、耐寒性の低い軟弱な芝を育ててしまい、冬期の凍害や病害のリスクを高めるため、特に注意すること。
- オーバーシードの成功には、種まき前のサッチングやエアレーションによる土壌改良(第4条参照)が不可欠である。


