目次
第1条(目的)
本規約は、芝生が休眠期に入り、その生育が停止する冬季において、芝地の美観を維持しつつ、芝生の健全性を損なわない観賞および利用方法を定めることを目的とする。これにより、厳しい季節においても芝地の魅力を最大限に引き出し、翌春の生育に悪影響を与えない管理を実現する。
第2条(定義)
**「冬季」**とは、暖地型芝生(高麗芝など)が休眠期に入り、生育が著しく緩慢または完全に停止する期間(概ね11月下旬から3月上旬)を指す。
**「休眠期」**とは、低温により芝生の代謝活動が低下し、成長が停止している状態を指す。この期間、芝生は乾燥や踏圧などの物理的ストレスに対して極めて脆弱になる。
**「観賞」**とは、芝地の景観を眺めて楽しむ行為全般を指すが、本規約においては、芝生の上に立ち入る利用行為を含む場合の注意事項も含む。
第3条(冬季の芝地の状態とリスク)
冬季の芝地は、以下の特殊な状態にあることを理解し、観賞・利用にあたってはそのリスクを認識しなければならない。
- 茶色への変色: 暖地型芝生は休眠により葉の緑色を失い、茶色に変色している状態を基本とする。
- 極度の脆弱性: 休眠中の芝生の葉や茎は乾燥しており、細胞内の水分も少ないため、わずかな踏圧や摩擦でも葉が折れやすく、損傷が回復しない。
- 霜と凍結: 早朝や夜間には霜が降りたり、土壌が凍結したりする。特に霜が降りている状態での踏圧は、葉の細胞を破壊し、踏み跡が黒く残って春まで消えない**霜焼け(しもやけ)**と呼ばれる現象を引き起こす。
- 病害リスク: 積雪や過度の湿潤状態が続くと、雪腐病などの低温下で発生する病害のリスクが高まる(芝地管理規約4を参照)。
第4条(冬季の観賞方法と一般利用の制限)
冬季の芝地の観賞および利用は、以下の基準に基づき、芝生への負荷を最小限に抑えなければならない。
- 観賞の推奨: 景観の観賞は、芝生外の舗装路や縁石、テラスなど、芝生から離れた場所から行うことを原則とする。
- 立ち入りの制限: 休眠中の芝生は、美観維持と翌春の健全な生育のため、原則として立ち入りを厳しく制限する。特に、霜や雪、凍結がある状態での立ち入りは、いかなる目的であっても厳禁とする。
- 霜焼けの回避: 霜が降りた状態で芝生に立ち入ると、その踏み跡が春まで残るため、霜が溶けて芝生が完全に乾燥するまで待ってから、やむを得ない立ち入りを行うこと。
- 部分利用: イベントなどでやむを得ず一部の利用が必要な場合は、事前に芝生保護マットなどを敷設し、直接的な踏圧から芝生を保護する措置を講じること。
第5条(冬季美観維持のための選択肢)
冬季の緑の景観を観賞するために、以下の代替手段を検討することを推奨する。
- オーバーシード: 秋季に寒地型芝生の種子を播種し、冬季にも緑を保つ方法である。この方法を導入した場合、芝生は緑色を保つが、依然として低温や凍結によるダメージのリスクは存在するため、極端な踏圧は避けること(芝地管理規約1を参照)。
- 芝生専用塗料の使用: 休眠中の茶色い芝生に、芝生専用の着色剤を散布し、一時的に緑色に見せる方法である。これにより、景観の満足度を高めることができる(芝地管理規約7を参照)。ただし、塗料を使用した場合でも、休眠中の芝生の細胞が回復するわけではないため、踏圧は避けること。
第6条(積雪時の管理と観賞)
積雪があった場合の芝地の観賞および管理は、以下の基準を遵守しなければならない。
- 雪の除去の制限: 芝生上の積雪は、芝生を寒気から守る断熱材としての役割も果たすため、原則として除去しないこと。
- 踏圧の厳禁: 雪が積もった状態での立ち入りや、雪かき、雪の積み上げなどの行為は、雪圧により芝生に大きなダメージを与え、雪腐病のリスクを高めるため厳禁とする。
- 雪解け水の排水: 雪解けに伴い、芝生が過度に湿潤状態にならないよう、排水溝や水路の詰まりをチェックし、排水性を確保すること。
第7条(春に向けた観賞・利用の準備)
冬季の観賞・利用方法が翌春の回復に影響することを認識し、以下の点を留意すること。
- 踏圧箇所の記録: 冬季にやむを得ず踏圧が生じた箇所は記録し、春の生育開始時にエアレーションや目土などの集中ケアを施すこと(芝地管理規約6、3を参照)。
- 清掃: 芝生の緑化が始まる前に、芝生上の落ち葉やゴミ、冬季に持ち込まれた異物をきれいに取り除き、芝生に十分な日光が当たる状態を確保すること。
- 病害の早期発見: 冬季明けは、芝生の状態を注意深く観察し、病害の早期発見に努めること。休眠明けの芝生は回復力が弱いため、初期の対応が重要となる。
第8条(注意喚起)
本規約の遵守は、芝地管理者の責務であり、第三者(訪問者、家族等)に対しても、冬季の芝生の脆弱性について十分に注意喚起を行う義務がある。特に「霜が降りている芝生は歩かない」というルールは徹底すること。

