【登山クリエイター】遥かなる絶景 富士山の魅力は「外」と「森」【1:富士山編】

登山クリエイター

夕闇が迫る頃、
橙色に染まった空の下、
富士山がその堂々たる姿を浮かび上がらせる。

ただ登るだけが、この山の魅力ではない。
富士は、見る場所、
感じる場所によって、
幾重にもその表情を変える。

さあ、知られざる富士の旅に出かけよう。

 

雲上の孤独、プリンスルートの静かなる挑戦

 

富士登山と聞けば、
誰もが人波に揉まれる吉田ルートを想像するだろう。
しかし、本当に富士の懐に触れたいなら、
通称プリンスルートを選んでほしい。

それは、六合目の宝永山荘から始まり、
荒涼とした岩肌を縫うように進む、
静かで孤独な道だ。

一歩一歩、
高度を上げるたびに、
足元の景色はダイナミックな姿へと変貌していく。

まるで地球の心臓部を覗き込むかのような、
過去の噴火が生み出した地形が眼前に広がる。
特に圧巻なのは、
富士山の側火山、
宝永山の火口を通り抜ける瞬間だ。

1707年の大噴火の痕跡が、
ぽっかりと口を開けている。
その巨大な窪地を目の当たりにすると、
大地のエネルギーを肌で感じずにはいられない。

 

このルートは、
他の道に比べて登山者が少ない。
自分のペースでゆっくりと、
富士の素顔を味わえるのが何よりの贅沢だ。

山頂が近づくにつれて、
御殿場ルートの大砂走りが眼下に広がる。
広大な砂の斜面は、
見る者を圧倒する。

吉田や富士宮ルートとは一味違う、
静寂と迫力に満ちた富士を求める者にとって、
これ以上の道はないだろう。

 

遥か彼方から、富士を愛でる贅沢

 

富士山は、ただ登るだけの山ではない。
遠くからその全貌を眺めるのもまた、
至福の時だ。

特に、山梨県の御坂山地から見渡す富士は格別だ。
この場所は、富士山の北側に位置し、
三ツ峠山や黒岳、節刀ヶ岳など、
富士を遮るものが
何もない絶好の展望スポットが点在している。

 

三ツ峠山は、
開運山、御巣鷹山、木無山の3つの峰が連なる。
山頂に立てば、360度のパノラマが広がり、
富士山だけでなく、
南アルプスや八ヶ岳までもが一望できる。
冬の澄んだ空気の中、
雪を纏った富士が青空に映える姿は、
息をのむほど美しい。

 

黒岳からは、富士五湖の一つ、
河口湖を眼下に捉えることができる。
湖面と富士が織りなす絵画のような風景は、
旅の思い出に深く刻まれるだろう。
遠くから眺める富士は、
その荘厳さを改めて私たちに教えてくれる。

 

樹海の神秘、生命の絨毯を歩く

 

富士山の裾野に広がる青木ヶ原樹海
その名を聞くと、
どうしても負のイメージが先行しがちだ。
だが、一歩足を踏み入れれば、
そこは神秘に満ちた別世界だ。

この森は、
過去の噴火で流れ出た溶岩の上に形成された、
奇跡のような場所だ。

足元の溶岩は苔で覆われ、
まるで緑の絨毯が敷き詰められたようだ。
木の根は地面を這うように伸び、
薄い土壌の上で生きる生命の力強さを物語っている。

また、富岳風穴や鳴沢氷穴といった溶岩洞窟の周辺には、
安全に歩ける遊歩道が整備されており、
安心して散策が楽しめる。

樹海の中には、
溶岩が流れる際にできた溶岩樹型と呼ばれる空洞など、
地質学的に興味深い見どころも多い。
専門のガイドに案内してもらえば、
この森の成り立ちや、
そこに息づく命の営みについて深く知ることができる。

 

富士山は、ただ登るだけの山ではない。
その懐に飛び込み、
孤独な道に挑むもよし。
遠くから、その完璧な姿を愛でるもよし。
そして、
その足元に広がる神秘的な森を探検するもよし。

あなたは、どの富士に出会いたいだろうか?

タイトルとURLをコピーしました