【芝地管理規約】:9. 刈り止め

芝地管理規約

第1条(目的)

 

本規約は、芝生の休眠期への移行に際し、適切な時期と高さで芝刈り作業を終了する刈り止め(ラストモウ)作業を実施することを目的とする。これにより、冬季における芝生の健全性を確保し、寒害や病害虫のリスクを低減し、翌春の生育開始を円滑にする。

 

第2条(定義)

 

「刈り止め(ラストモウ)」とは、
暖地型芝生(主に高麗芝など)の生育が緩慢になり、休眠期へ移行する直前に、そのシーズン最後に行う芝刈り作業を指す。この作業では、通常の刈り込みよりも最終的な高さを慎重に設定する必要がある。

「暖地型芝生」とは、
夏季に生育が活発で、気温が低下する秋季に休眠期に入り、茶色に変色する芝生品種を指す。

「サッチ」とは、
芝生の刈りカスや枯れた根・茎などが分解されずに蓄積した層を指す。刈り止め時には、このサッチの管理が特に重要となる。

 

第3条(刈り止めの重要性)

 

刈り止めは、冬季の芝生管理において以下の重要な役割を果たす。

  1. 寒害の予防:
    適切に短く刈り込むことで、芝生の葉や茎(ランナー)に風通しを良くし、水分が過度に蓄積するのを防ぐ。これにより、凍結によるダメージ(寒害)や、霜柱の発生による根の浮き上がりを防ぐ効果がある。
  2. 病害虫の抑制:
    密生した長い葉は湿度を保ちやすく、冬期間の雪や霜の下で雪腐病などの病害や、ネズミなどの害獣による食害のリスクを高める。刈り止めにより、風通しと日当たりを確保し、病原菌の繁殖を抑制する。
  3. 翌春の準備:
    葉を短くして休眠させることで、翌春の日照を土壌に届きやすくし、地温の上昇を早める。これにより、休眠からの目覚め(萌芽)をスムーズにし、早期の生育開始を促す。
  4. サッチの管理:
    最後の刈り込み時にサッチを効果的に除去しやすくすることで、翌春に向けた土壌環境を整える。

 

第4条(実施時期)

 

刈り止めは、以下の時期に実施することを推奨する。

  1. 時期の目安: 暖地型芝生の生育が著しく緩慢になり、変色が始まる直前(多くの場合、10月下旬から11月上旬頃)が最適な時期となる。
  2. 判断基準: 芝生の成長速度が通常の半分以下になり、かつ日中の最高気温が20℃を下回り始めた時期を一つの目安とする。
  3. 注意事項: 芝生が完全に休眠に入った後や、霜が降りる時期になってから刈り止めを行うと、芝生に大きなダメージを与えるため、適切なタイミングを見極めることが重要である。

 

第5条(刈り止めの高さ(最終草高))

 

刈り止めの際の最終的な草高は、通常の生育期よりも短く設定することが原則となるが、極端な低刈りは避けること。

  1. 推奨草高:
    暖地型芝生の場合、通常の管理高よりも一段階下げた高さ(例:通常の管理高が20mmであれば10~15mm程度)を推奨する。
  2. 目的別調整:
    • 病害対策を重視する場合: 特に雪や霜が多い地域では、病害を予防するため、やや短めに(10mm前後)設定することを推奨する。
    • 乾燥・寒害を重視する場合: 寒風に晒されやすい場所や乾燥しやすい場所では、根を保護するため、極端な低刈りは避け、通常の管理高に近い高めに設定すること。
  3. 段階的刈り込み:
    一度に推奨草高まで刈り込むのではなく、数回の芝刈りを通じて徐々に高さを下げ、最後の刈り止めで最終的な高さに到達させる「段階的刈り込み」を推奨する。これにより、芝生へのストレスを最小限に抑えることができる。

 

第6条(実施手順)

 

刈り止め作業は、以下の手順を遵守し、通常の芝刈りよりも入念に行うこと。

1. 事前準備と最終刈り込み

  • 最終刈り込み:
    第5条で定めた最終草高になるよう芝刈り機を設定し、芝生全体を均一に刈り込む。ムラのないよう、慎重に作業を行うこと。
  • 刈りカスの徹底除去:
    刈り止めによって生じた刈りカスは、その全てを芝生上から完全に除去することを必須とする。刈りカスを放置すると、サッチ層を厚くし、病害や害獣のリスクを高める。

2. 刈り止め後の管理

  • サッチング:
    刈り止め後、サッチ層が厚いと判断される場合は、サッチング(サッチ除去作業)を必ず実施すること。冬季の湿潤な環境下での病害(雪腐病など)発生リスクを大幅に低減させる。
  • エアレーションと目土:
    刈り止め時期に合わせ、エアレーションと目土(芝地管理規約6、3を参照)を実施することで、冬季の土壌環境を整え、翌春の生育を促進する効果が期待できる。
  • 施肥(冬期施肥):
    根の貯蔵養分を充実させるため、刈り止め作業後、速効性の低い緩効性肥料またはりん酸・カリウム分が多い肥料を施肥することを推奨する。窒素過多は休眠を妨げ、寒害リスクを高めるため避けること。
  • 最終水やり:
    土壌が乾燥している場合は、刈り止め後にたっぷりと水を与える。その後は、土壌が凍結するリスクを避けるため、休眠期中は水やりを最小限に留めること。

 

第7条(注意事項)

 

  • 低刈りのリスク:
    推奨される草高よりも極端に短く刈り込む軸刈りを行うと、根を覆う保護層がなくなり、芝生が寒さや乾燥に弱くなり、翌春の回復が遅れる、あるいは枯死するリスクがあるため厳禁とする。
  • オーバーシードとの併用:
    オーバーシード(芝地管理規約1を参照)を実施する場合、刈り止めは寒地型芝生の播種前に行う準備作業の一部となる。この場合、種子が土壌に触れるように、極力短く刈り込むことが推奨される。
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  • 病害の確認:
    刈り止め作業中、芝生に病害の兆候(変色、斑点など)が見られた場合は、適切にサッチを除去し、必要に応じて薬剤散布等の病害対策を施してから休眠期に入ること。
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