ゲシュタルト心理学の基本は、
「全体は部分の単なる合計ではない」という考え方です。
ローズマリーを認識する時、色、香り、味、触感といった個々の要素を別々に認識するのではなく、
それらが組み合わさった「まとまり」として認識し、特定の意味や経験をすぐに結びつけます。
1. ローズマリー体験の全体性
ローズマリー体験を構成する要素と、それらが合わさって生まれる全体像は、次のようになります。
| ローズマリーの「部分」（要素） | 知覚の法則による結合 | 「全体」（ゲシュタルト）として認識される体験 |
| 樟脳（カンファー）のような強い香り | 近接の法則・共通の運命の法則 | 「清潔感」「覚醒」「記憶」といった効能や連想を即座に引き起こす。 |
| 硬く尖った濃緑色の葉の視覚情報 | 類同の法則 | 「強さ」「不変（常緑）」「古代」といったイメージと結びつく。 |
| 加熱による風味の変化（苦味と揮発性） | 閉合の法則 | 料理に加えられた際、肉や油の風味を引き締め、全体を完成させる「地中海の風味」として知覚される。 |
2. 知覚の法則の適用
ローズマリーの認識に強く影響するゲシュタルトの法則は、以下のとおりです。
① プレグナンツの法則（良い形への志向）
人は情報を、できるだけシンプルで安定した意味のある形として捉えようとします。ローズマリーの複雑な香りや形状は、「地中海ハーブの代表」「記憶を呼び覚ます刺激」というシンプルな概念にまとめられ認識されます。成分の複雑さを意識せず、「ローズマリーの香り」として体験するのです。
② 共通の運命の法則
同時に動き出したり、同じ方向に変化する要素は、まとまりとして認識されます。ローズマリーが料理に加えられて加熱されると、香り、油溶性成分、味が一体となって風味を良くします。この変化により、ローズマリーは単なる葉ではなく「風味を整える調味料」として認識されます。
③ 閉合の法則
人は途切れた情報でも、不足部分を補って全体を把握しようとします。ローズマリーを使った料理を食べる時、香りの一部やかすかな苦味しか感じないかもしれません。しかし、過去の経験から得た情報で補完し、「ローズマリーだ」「地中海の風味だ」という完全な風味を再構築し、体験を完結させます。
